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1枚のコイン

○読売新聞(12月5日)
【特集】 職業観育成教育□下■


 玄田有史の
「成功する条件は、地域や社会が他人の
子どもに関わる機会がいかに増えるかだ」
に首をたてに振る。

 いつの頃からか、他人の子どもに関わらない
雰囲気になってきた。
プライバシーとはいえども、本当に大事なときに
叱ることが難しくなっているのかもしれない。
松原隆一郎さんのおっしゃる孤立化はこんな
ところから起こっているのかもしれない。
よその人に声をかけられてもついて行っちゃ
ダメよはそうだが、大人が孤立していては
こういう事件からも子どもを守れない。
性犯罪者の再犯率は非常に高いそうで、この
類の犯罪への対策は頭を悩ませるところだろう。

            ●

 昨今は昔よりも「民」(企業)の大きなミスが
発生しているように思う。

 修正すればわからなければいいやとなっていると
いうことだが、
それだけ業務が集中して「離人感」で仕事をしな
ければならない、その現実を変えないかぎり、
おそらくこういうミスはなくならないだろう。

 昔は、ベテラン社員が何人かいて、わかんなくても
「この人に聞けば」というのがあったのではないか。
やっぱり「お局様」「年寄り」なんて揶揄している
場合ではなく、ベテランの力もミスを防いでいた
んだろう。

 「お局様」なんて言葉は、死語だ。
「ベテラン」「先輩」で十分(男女共同参画推進中!)。

 今の社員構成をみると、男性は50代が
過剰に多く、反して、女性は20代が多い、
そんな社員ばかりが集うところもあるんだろう。

            ●

 この成功する条件は、キチンとウラの情報を
伝えてあげることだろう。
悪いことに、成果主義が始まってから、会社に
よっては、「自己実現」なんていうところも出てきた。
サラリーマンは自分の希望とは参考程度で、
最終的には会社の都合によるんです。
ということだろう。

 また、どんなに自己実現と叫んでみたところで、
なれないものはなれないし、管理職の椅子だって
最初から限られている。それを努力次第ですよ
なんていうのも、ウソだとわかっていたほうが
いい。

 管理職になれなくたって死にやしないし、
それがわかっていれば、自分で働きかたを考えたり
自分の身を守る方法を知ったり、単なる会社人間
にならなくてすむはず。

 それから、「好きなことをやっていれば幸せ」は
一面本当かもしれないが、苦しいのもまた真実
ではないか。記者もラヂオを書きながら
「やりがいがあって幸せでしょ?」
といわれたりしたが、やりがいがあるのは
本当でも、苦しい時もけっこうあった。
書くことがないなぁ(ぼやき)と。

 この前の土曜日、NHK教育「ともに生きる」という
障害者雇用をテーマにした番組を観た。
「障害をもつ人は働く意欲が希薄だ」とする指摘が
多々あったが、本当は採用しているところもある
のに、「障害者の就職は厳しい」と大人が喧伝し、
それを信じこんであきらめの気持ちが強くなって
しまった人もいるんじゃないかと思う。
そのあたり、ニートの人たちのことを少し思い出す。

             ●

 働く1人として、これから働きはじめる人になにか
伝えるとしたら、
・面接担当者がいい人に見えても、その人とかならず
しもいっしょに仕事をするわけではない。
・働くうえで、就業規則や法律には1度でも目を通して
おくべき。わからないことはどんどん聞いていいし、
ちゃんとした説明が得られなかったら、おかしいと
思っていい。
・運や縁の部分も大きいので、就職が厳しいときに
就職活動をすることになっても、落ちても受かっても、
少し前向きに受け止めたほうがよい。

 こういうことが専門教育よりも、自衛策につながる
んじゃないんだろうか。

 それから、他人の子どもに関わることは、大人に
とっても、孤立化を防ぐ自衛になる。また、堺屋
太一さんの言葉を借りると、「職縁」以外の「地縁」を
拓くいいチャンス。

 どういうわけか、子どもは
「普段慣れ親しんだ大人(親も含む)のいうことなら
聞かなくても、他の大人のいうことなら聞く」
そうだ。よその人はいいしつけ役となればいい。

             ●

 義務教育段階での職業体験の意味は大きい。
昔にもけっこう「高校は学園ドラマのように楽しい」
と中学がつまらなくて高校に過剰な
期待をかけ、ガッカリしている人がいた。
高校進学しない人にはもちろん、進学する人にも
「そんなに楽しいことばっかりじゃないけど、たまには
いいこともある」
と知っておくのはいいことだ。

                   井上 智晴

2011年10月

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