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みんな、運動会はリレーで盛り上がろう

 「仕事のなかの曖昧な不安 揺れる若年の現在」
(中公文庫 2005年3月)


 この本は、20代~30代のいわゆる若手を想定して書かれたようである。

玄田有史によると、
「45歳以上の割合が1%増えると、新規高卒の採用は1.8%、大卒文系なら3%、
大卒理系なら2%抑制される」(前掲書 2章56頁)

うわあ、若者は大変だ。
おじさん、おばさんの雇用を守る代償に採用が少なくなっていると思うだろう。

でも、カンのいいおじさんとおばさんなら気づいている。
「あぁ、僕が(私が)いま就職活動をしていたら、フリーターだったかもしれない。
昔はよかったなあ。」

成果主義とやらの導入によって、おじさんおばさんの将来も、文字通り不安なものと
なってきたのかもしれない。

なんにもしてないつもりだったのに、突然エクセルの画面が強制終了する。
こつこつ貯めたデータは瞬時にふっとび、頭の中は真っ白になる。

わからないので、しかたなく若手に聞くと、
「わからないですね。しょうがないからまた作りなおしてください。」
と冷たくいわれ落ち込んでいるところに、
今度は年下の上司から、
「まだできてないのか、早く」
なんて催促がくる。

おじさんおばさんだって大変なのだ。
転職しようっていっても、求人には年齢制限もあるしと思う人もいるだろう。

昔、帳簿は手書きでそろばんをはじいてつけていた。
その後、電卓が登場し、パソコンが出てきて、省力化されてきたのを
多くのおじさんおばさんは知っているはずだ。

その荒波の中で日々こつこつと努力を重ねてきた。
だからこそ、今日の日本があるのだ。
すばらしい。

玄田有史は、
「これからの日本が発展していくには、マリーシャ が必要だ」(エピローグ 254頁)
と書いていた。

マリーシャって何だ?
学者さんはすぐ横文字使うんだからとお思いの方、「したたかさ」のこと。

したたかとは、たぶん野球の戦法のようなもの。
戦法がなくっちゃとても9回までは戦えないだろう。
もしも、監督がすべてのイニングで「がんばれ」ばかりいっていたら、選手は疲弊してしまう。

いまのおじさんおばさんの中には、「がんばれば」とか、
「夢をもって」なんて思っていた人も 多いかもしれない。

この本でも登場している松下幸之助さんは
「安にいて危を思う。思えばすなわち備えあり。 備えあれば患なし」
といい、起こりうべき事態への目配りの重要性を説いている

(『松下幸之助有人憂語』38頁 大 久光編著 昭和56年)。

これこそ、マリーシャなのではないか。
「がんばる」でも「夢をもつ」でもなく、先を考えながら生きていく。

運動会の種目には多くの場合、リレーがある。
リレーは第1走者からアンカーまでバトンがつながりゴールすることで、終わりを迎える。

成果主義の賃金制度であれば、1人1人がみな俊足で常にトップを走ることが
最善と評価される のかもしれない。

でも、現実にはそんなことありえない。速い人と遅い人が抜きつ抜かれつしながら走るからこそおもしろいし、見ごたえがあるというものだ。

保護者レースなら、普段運動不足のお父さんお母さん、
健脚自慢のおじいちゃんおばあちゃんもエントリーできる。
翌日以降の筋肉痛を覚悟 しつつかもしれないが。

近所の大人達が走っているのをみて、若者や子どもたちも応援したり、
感動したりするに違いない。
場合によっては、大人の横を一緒に走ってくれるかもしれない。

若者は若者どうし、中年は中年どうしで
「あの頃は××がはやったねぇ・・・。」と語りあうのは楽しい。
だが、もっと楽しいのは、世代を超えて1つのことを一緒にやることだ。

森永卓郎さんの解説は、玄田有史の若者に対する愛情を語りつくしているが、
若者のみならず、元若者の大人にもエールを送っているようにさえ思える。

運動会のリレーに出場する方は、くれぐれも筋肉痛にご注意ください。


                 井上 智晴

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