「ニート~働けない若者たちの実情と支援」
~親として何ができるか考える~
<日時>4月23日(土)13:30~16:00
<会場>群馬県民会館 小ホール
<司会>丸山 実子氏(NPO法人キャリア倶楽部)
丸山さんの「みなさま・・・」から始まる開会の
言葉は、まさにこれから飛行機が飛び立ちそう
だった。
群馬にきて、飛行機旅行ができるとは、キャリア
倶楽部航空はすばらしい。
離陸前にはベルトを着用。
◆開会の挨拶
太田 和雄氏(NPO法人キャリア倶楽部理事長)
キャリア倶楽部の設立の経緯やそれを支えて
こられた方々への謝辞が印象的。
太田機長の操縦する飛行機は、軽やかに滑走
路を走り始めたかのようだった。
◆基調挨拶
山崎 秀夫氏(厚生労働省職業能力開発局
キャリア形成室 室長補佐)
3日に1度新聞紙上に「ニート」が登場して
いる。
「ニート」とは、社会との接点がない若者たち
行政では
2年前 若者自立挑戦プラン
ジョブカフェ(各県)の設置
そのほか 若者自立塾
を行なっている。
この若者自立塾とは、全国20ヶ所
1ヶ所につき20人 合宿形式のもの。
第三者が手を出して、
「労働体験」をし、
「人間力」をつけてもらおうとするもの。
行政含めたネットワークが必要。
山崎さんは大事な瞬間である離陸を
難なくやってくださった。
飛行機は離陸を終えて、窓からは薄く
雲のかかった山々がきれいに見え始めた。
◆基調講演
玄田 有史(東京大学社会科学研究所助教授)
丸山さんは玄田有史の著書『ニート』『14歳
からの仕事道』を手に、「買ってください。」と
営業されていた。
乗客には、コーヒーやオレンジジュースを
サービスしてもらうかのような、自然な感じ
だったのだろう。これぞ、サービスの鏡。
「ニート」はだらしのない若者といわれるが、
「子どもの問題は大人の問題」
コミュニケーション・スキル、英語、PCスキル
(パワポ=Power Point)などというけれども、
私は英語を使う発表なんて年にほとんどないし、
「駅前留学」なんかしなくても、大人はそんなに
論理的に話をしているわけではない。
子どもはいじめなどで疲れきっているのに、
大人は自分がわからないものをコミュニケー
ション・スキルがないといっているのではないか。
このあたりから、関西弁があらわれ高度は
グングン上昇していく。玄田有史の操縦は、
腕に熱がこもっていたが、ちょっと大丈夫かな
と思っていたら、
「これから5分間でコミュニケーション・スキル
をつけてさしあげます。」
1.前のめりに聴く
2.うなずく
3.ちょっと首を振る(やりすぎると否定的な
人に思われるので注意。)
4.メモをとる(フリをする)
このあたりになると、玄田有史の操縦にも
慣れてきたのか、乗客の中に笑い声が渦巻き
はじめた。
サラリーマンのイメージは悪い。ただ、
サラリーマンにも休憩所での遊びがある。
仕事は99%が失敗。大人がいろんな
大人と交わること。
キャリア倶楽部の設立経緯は、詳しく
知らないが、太田さんも人事の仕事をとお
して人と仕事が出会えないさみしさ・悔しさ
を体感されたはずだ。
ゆとり教育は国民が決めたこと。100%
ハッピーな教育なんてありえない。教育に
それを求めるのは幻想。
山崎さんが操縦されていた時に、見えた
きれいな山々ははるかかなたになっていた。
ずいぶん遠くへきたもんだ。
◆報告
長須 正明氏(東京聖栄大学健康栄養学部講師)
丸山さんは長須さんを「春らしいピンクのネ
クタイがよくお似合いです」と紹介された。
長須さんは「私は暗い性格なのでせめてネク
タイくらいは明るく」とおっしゃっていたが、
暗いというより”熱い”人。
これをお読みのみなさんにも、長須さんの
”熱さ”をたっぷり味わっていただこう。
20年間都立高校で教員を務めてきたが、
1から10まで生徒指導だった。専門の教科より
もバスケット部の顧問であったことをよく覚えて
いる。
長須さんに操縦が代わったので、玄田有史
よりも安定的な操縦をされるのかと思いきや、
いきなり気流の乱れに突入した感じであった。
若い人に必要なのは「経験」
1.「やりがい」とはやってみないとわからない。
やってみる「前」と「後」では違う。
2.やれることから考える。
大人はやってみるのを見守る。(背中を押す・
しくみを作る)
3.人の人権を侵害しない。
働くことは最低限「暇つぶし」
イヤでも嫌いでもできることはある。
最初、飛行機が揺れるのは気流の
乱れのせいかと思ったが、ここまで揺れが
激しくなると、
長須さんの操縦のせいかと思うようになる
ほどだった。
乗客は景色を楽しむ余裕もなく、長須さ
んの操縦に神経を集中しているようだった。
ある講演で、「『13歳のハローワーク』の
最後のほうにやりたいことがみつからなくても
よいというくだりがあるが、くだらない」といったら、
いちばん前に座っていた聴衆に
「お前がくだらない!」
といわれた。
ちょっと揺れていた機内から、安堵感の
ためか、ふたたび笑い声が聞こえてきた。
長須さんの操縦は、ジェットコースターに
近かったかもしれない。
でも、それはそれで、スリリングだったのは
まちがいない。
◆報告
工藤 啓氏(NPO法人「育て上げ」ネット理事長)
丸山さんは工藤さんのことを「人前で話をする
のがちょっと苦手」と表現された。
見た目ではそんな感じはしなかったが、いまど
きの若手らしく「ナイーブ」なのかもしれない。
フリーターの人は
「やりたいことがみつからない」
ニートの人は
「やりたいことがない」という。
ニートの人はまじめというより”きまじめ”
いじめにあったとか、無視されたというわけでも
なく、周りからみて「特に関わらなくてもいい人」
だったのではないか。
長須さんのジェットコースター飛行とはうって
かわって、超低空飛行になった。それでも、や
る気がないわけではない。乗客の乗り心地に
配慮した操縦を心がけていた。
「育て上げ」ネットにくる若者たちの95%が
最初昼夜逆転の生活をしている。
その理由は、
1.若者むけの深夜番組を見ている。
特に目的がなければ、起きないのは自然な
こと。
2.人に会いたくない。
「1回起きてご飯を食べてから寝たら」
「1回外に出てからまた寝たら」
とアドバイスをしている。
相談の内訳は、(本人の年齢)15~19歳
5%以下、25~30歳が多い。
保護者が定年になり、年金生活になったこと
がきっかけになっているようだ。
相談の8割が母親。そのうちの50%は
母親にお願いしている本人という背景がある。
静かななかにも、深い問題提起があった。
玄田有史の「ニートはだらしのない若者では
ない」をひきたたせていた。
◆報告
太田 和雄氏
丸山さんは「理事長の太田」とおっしゃった
が、このときの太田さんはベテランの機長に
みえた。どんな着陸をするのか楽しみだ。
ニートの人の履歴書講習会をしたら、
履歴書の左側でとまる。職歴も途中。
ジョブ・トレは立派なキャリアであり、
「相手にどう伝えるか」が大事だと伝えて
いる。
キャリアとは、ご家族の心のケア。
ニートの親御さんはとても暗いが、
希望の光がみえるよう、一緒に考えていく。
飛行機の窓からは小さな星が見えてきた。
太田機長の心のなかを映し出しているように、
真っ暗な夜空に輝きを放っていた。
◆パネルディスカッション
燃料補給(休憩)のため、いったん無事に
着陸した飛行機は、ふたたび動きはじめた。
今までは1人1人のパイロットが操縦して
きたが、今度は5人のパイロットによる共同
作業に。
石黒 俊彦氏(NPO法人キャリア倶楽部
キャリアカウンセラー)も操縦に加わった。
乗客のアンケートに質問を書いてもらい、
その質問に4人のパイロットが答える方式で
行なわれた。
ここからの司会は、丸山さんから玄田有史
にうつった。
(玄田有史)
子どもが働く意欲がなく、困っています。
どうしたらいいでしょう。
(長須さん)
最初から「フリーターはダメだ」などと
枠にはめない。
(石黒さん)
親御さん(母)のカウンセリングが必要。
責任を感じすぎていると思う。
(太田さん)
みんなが悩んでいる。
(玄田有史)
お父さんは何をしたらいいですか。
(工藤さん)
お母さんのサポートをしてほしい。
お父さんは社会性のにおいが強すぎる。
(玄田有史)
最近、大学関係者の方から、連絡が
とれない親御さんがいると聞くが、そんな
親御さんに対しては?
(太田さん)
父母が
例えば「フリーターでもいいじゃないか」と
いうふうに語る。
(長須さん)
親には親の人生がある。親が必要以上に
いわない。家庭の文化によって、学校の受け
とり方は違うもの。
(石黒さん)
私は学校の先生に対して、批判的な面も
ある。
(玄田有史)
ニートは親と同居しているから悪いんじゃない
でしょうか。
(山崎さんにふたたび搭乗していただく)
それを形にしたのが、「若者自立塾」
である。
(工藤さん)
今まで2人ほど「働かないなら出ていけ」と
いわれたニートと話したことがあったが、
ホームレスをして生きていたそうだ。
イギリスでも、「家庭がなくなったら大変」
といわれている。
(長須さん)
親は自分の人生をそこそこ楽しむ。
(玄田有史)
親が過干渉であったり、無関心であったり
しているともいわれるが。
(石黒さん)
みんなでよくなっていく必要がある。
(工藤さん)
ニートの人は、親がニートのようだ。
社会とつながっていない。
(玄田有史)
そんなこといったら、ほとんどの大人が
ニートでしょう!
こんなこといっちゃいけないかもしれま
せんけど、子どもがニートになるのは案外
幸せなんじゃないかと私は思って。
大人が悩んでいるのをわかったり、つな
がったり。
(長須さん)
ニートの人は対人関係の濃淡がはげしい。
玄田有史の語気はとても強く、大変
印象的だった。このときばかりは飛行機が
墜落するかと思った。飛行機に乗るときは
乗客も最後まで気が抜けないのかもしれない。
(玄田有史)
うつ病など病気の場合は、どうしたら
いいですか。
(太田さん)
治療と社会との距離を遠ざけないように
する。
(石黒さん)
カウンセリングと専門医の併用をお薦め
する。
(長須さん)
制度を最大限活用し、薬を服用する。
(玄田有史)
ニートの問題は、社会の構造による
ものではないでしょうか。
(長須さん)
ライブドアの堀江さんの問題提起は
大きかったが、ただ1つだけよくなかったのは
「金さえあれば何でもできる」といってしまった
ことだ。
金さえあれば何でもできるわけではない。
(太田さん)
私は学生たちに「いまの時代はよくない」
なんていわない。
(玄田有史)
地域活動がないことも一因なのか?
(工藤さん)
商店街のお祭りで若者がみこしを
かついだりすることがある。
(長須さん)
地域にはよい点も悪い点(あそこの
夫婦は夫婦仲が悪いなど)もある。
(玄田有史)
地元(=群馬)に戻ってきたい人は?
(太田さん)
産業雇用安定センターがある。
(渡邊さんより:NPO法人 DNA)
群馬県内には、ジョブ・カフェぐんまが
ある。高崎・桐生・沼田の3ヶ所。
(玄田有史)
人には相性があるので、複数の
ところを回ったほうがいい。
(玄田有史)
早寝早起き朝ご飯ということで、
子どもと一緒に朝ご飯を食べよう。
親は子どもとウマがあわなければ
ならないわけではない。
ちょっとこういう場を利用して、
子との距離をはかってみる。
(工藤さん)
大人が集まることが大切。
(長須さん)
「場」と「チャンス」「情報」がキーワード。
(石黒さん)
私も彼ら(=若者)も元気になればよい。
(太田さん)
大人のおせっかいができるといいと思う。
太田機長が安全に着陸作業をしてくださっ
た。乗客はまたキャリア倶楽部航空を使い
たいと思うのではないだろうか。
群馬から飛行機に乗ってどこまで行った
のか。行き先のわからない旅に行ってきた
のだ。
そんなバカな。と思う人もいるだろう。
この日、あの機内にいた1人の若者はこう
いった。
「おじさんの話はつまらないと思っていたが、
きょうのはもっと聞いていたいと思うほど、
おもしろかった。こんなことははじめてだ。」
たいがい旅行にいくと、飛行機は行き先に
たどり着くための手段になることが多い。
パイロットや機長の様子・客室乗務員の
働きぶり、他の乗客の様子なんてあんまり
気を配ってはいないはずだ。
ある人は群馬からヨーロッパに行った、
またある人はサンフランシスコに行ったと
思うかもしれない。
行き先のわからない旅は、その人が
行き先を決められる。気ままな旅といえる
かもしれない。
それぞれの乗客が飛行機を降りた後、
何日かして、パイロットや機長・客室乗
務員はよかったなぁと思ったら、
この旅行は収穫がたくさんあったといって
もいいだろう。
行き先がわからないなんてありえない
よと思う人は、10年後のきょうにきょうの
ことを思い出していただきたい。
写真もあれだけたくさん撮ったのに、
いったいどこの写真だったっけ?と思う
ことがきっとあるはず。
行き先もわからないし、おみやげなん
か買ったかなと思う人、
行き先なんか思い出せないけど、
こんな人に会ったとか、こんな景色が
みえたというのは意外と思い出せるの
ではないだろうか。
結局、思い出は人のなかにあるもの。
思い出に残るサービスができたら、
パイロットや客室乗務員として、いち
ばん輝いているのかもしれない。
井上 智晴












